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世界ナイフ紀行 
 
スコットランド

エジンバラ


 

今までの『ナイフ紀行』は、ほとんど仕事で行った土地での体験について書いたものだったけれど、今回は仕事ではなくて、勉強のために行った土地での記録になる。滞在は三ヶ月におよび、よく遊び、よく学ぶ素晴らしい体験になった。あちらでしてきた勉強というのは英語だったので、今回は英訳も書いてみることにする。三ヶ月も頑張った割にはつたない英語なので、恥ずかしいのだが。 



ある朝、通学のために学生寮を出てすぐ、朝焼けが綺麗だった

学校は寮から徒歩で20分ほど。最初は自転車通学を考えたので、寮に入った当日に、近所の自転車屋で折りたたみできるBromptonを買った。しかしこの通学路の大部分は坂道で、おまけに交通量が多く、さらに毎日のように雨が降るので、チャリ通学には向いていないことが分かった。幸いなことに市内の景色は美しく素晴らしいので、毎日眺めても退屈するとは思えず、徒歩でのんびり通学することにした。殆ど毎日霧雨の中だったけど、コートとマフラーでしっかりと防寒して歩き回った。

近所の公園で愛車と




週末には刃物屋を探して遠くまでチャリで出かけたこともあるが、どうしても見つからない。フランスやドイツならば町中の至る所で見つかるはずの刃物屋がない。英国とはそういうところらしいと、そのうち気がついた。

それでもこの地には、 Sgian-dubh(スキアン・ドゥ)という伝統的なナイフがあることが分かった。普通は厚手の靴下の中に隠し持つらしい。当然ながら対人武器だろう。今でも祭りの民族衣装には付きものだが、祭りでは刃がついていない玩具を使うことが多いと聞いた。現在の英国の法律は対人武器には大変厳しいのだ。同じクラスで勉強していたブラジル人女性が、護身用に持っていたスプレーを警察にとがめられ、裁判所でやっかいな目に遭うことになった。

その Sgian-dubh がどうしても町中で見かけないので、ネットで検索してみるとあっさり見つかった。しかしそれが届けられるまでに、こちらの年齢確認が必要だとか言われてパスポートのコピーを送ったり、手続きが大変ややこしかった。



学生寮でも色々なことがあった。週末の午前中は自習室で勉強していることも多かったのだが、一月ほどたったある日、イタリアから女子大生が一人やってきて、チェックインは午後なので、ここで少し待たせてもらうという。ランチのできる店は近くにあるかと聞かれて、私はかねてより企んでいた計画を彼女相手に試してみようと思った。

「君に館内を案内しよう。ついでに私のフラットのキッチンでスパゲティ・ナポリタンをごちそうしたいのだけれど、どうだろう?」 

日本の洋食店でよく出てくるスパゲティ・ナポリタンは実はイタリアにはなく、日本人の創作であると聞いていた。それをしれっとして、イタリア人に食べさせてみたいと、以前から私は企んでいたのだ。幸いにも食材は揃っている。しかし彼女は南東部のナポリ人ではなく、むしろ逆側の北西部・リグーリア州のジェノヴァ人だった。九州料理を東北人に食べさせるようなものか? それでもイタリア人はイタリア人、と私は妥協(?)した。
彼女もまた、日本のおっさんが手作りするイタリア料理(?)に興味を示し、ほいほいと乗ってきた。結果は大成功・・・だったと思う。とても美味しいと言いながら彼女は完食してくれた。

そのあと学校や寮生活のことをあれこれ話し、最後に彼女がキッチンを出て行こうとするときに振り返り、
「素晴らしいランチだったわ。でも、ナポリじゃ、ああいう料理はないと思うけどな・・・」と首をかしげる。そこで私が、
「だろうね。あれは日本人のオリジナルだそうだよ」と白状したら、彼女は大笑いを始めた。



彼女とのナポリタン会食を記録しなかったのが惜しまれる。

上はあり合わせの材料で作った親子丼。三つ葉がないのでルッコラがのせてある。



遺跡だらけの町なので、どこへ行っても楽しめたが、あるとき町の展望台のようなところでこれを見つけた。さすがにこの類いは武器としては扱われないようで、簡単に買えた。実際、この手の刃物は実用性が高い。しかもこの手の製品としては珍しく英国製であり、私にとっては掘り出し物だった。

        
 


町を一望できる丘の上の、さらに塔の上。
高いところが怖くて、全く楽しめない私。


私がなぜ英語の勉強のためにスコットランドを選んだか、という質問を、日本でもあちらでも頻繁にされた。理由はもちろん、そこが美味い酒であふれかえっているからだ。週末にはしばしば観光バスで蒸留所巡りをした。他にも見るべき観光地はたくさんあるのだろうが、私にはやはり、蒸留所が面白いのだ。しかし、私が特に好きなモルトウイスキーの蒸留所というのはたとえばタリスカー、グレンファークラス、バルヴェニーなどだが、いずれも今回見つけたバスツアーには含まれておらず、大変残念だった。次にあの国へ行くときは、インヴァネスを拠点として、Speysideをじっくりと見て回りたいと思っている。 

 

有名な Dewars 蒸留所で

  

ローマ時代の水道だね


  

スカイ島で



これもスカイ島だったか。
大西洋に沈む夕日と、月のツーショット。


  
  土産に買った珍しい酒

  あちらで買っても安くないけど。




私の卒業の日、クラスのみんなと。

私のエジンバラ滞在を楽しいものにしてくれたあなたたちに心から感謝します。
Martin, Mazun, Saleh, AbdroAzis, Ana, Natascha, and.....
Covid-19 が治まったら、またエジンバラで会えるかな?





2019年12月