世界ナイフ紀行
-- エチオピア
アジスアベバ その2
エチオピアの逆鎌包丁
エチオピアは年中同じような気候だ。日本の秋から春頃までは乾期なので青空が広がる。空気が極端にきれいなので、地面を見ていてさえ日差しが目を刺す。 |
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ブレードの側面の鎚跡が生々しい。ベルトグラインダーも使わないらしく(たぶんこの国には珍しいのだろう)、整形はまずタガネで側面を削り取り、仕上げは砥石のようだ。 肉を切ると吸い込まれるように刃が入っていく。見かけの無骨さとは裏腹に良く切れる。さすがに鍛造しているだけのことはある。しかし形状からして日本の台所では置場所に困る代物だ。少なくとも大きい方は包丁ホルダーに収まらないことを確認した。。 この包丁は一見、鎌のように見える。しかし、刃は逆側についている。三日月包丁もしくは逆鎌包丁とでも名付けようか。 |
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それと、このブレードは荒っぽい使い方をしてもハンドルから「スッポン」と抜けることはない。なぜなら金属部分はハンドルを貫き根本まで届いていて、大きい方はお尻のところでタングをクルリと曲げてあり、小さい方はバットキャップがついているかのように末端をつぶしてあるのだ。 |
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包丁に見るお国の事情 |
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この包丁の作りを見ると分かるように、この国にはまともな製造業が少ない。あれこれ工夫はあるにせよ、必要な工具がない。空気がきれいなのも当然だ。首都のアジスアベバを一周しても、工場の煙突らしきものはほとんど見かけない。汚染源は数少ない車の排気ガスだけだ。空港の免税店ではコーヒー豆だけは外貨での支払いを求められた。輸出して外貨を稼げるのはコーヒー豆だけだからだそうだ。 今回の旅では数人のエチオピア人を臨時に雇い、仕事を頼んだ。皆喜んで働いてくれた。27歳になってはじめて外で働いたという女性は5人の兄弟姉妹を持つそうだが、5人の内、4人は外国へ出稼ぎにいき、残っているのは自分と妹の二人だけだという。それでも彼女は元政府高官のご令嬢。こうやって働くつてが見つかるのはそのおかげらしい。とにかく国内に雇用がない。数日の臨時雇いでもありがたがってくれる。 ちなみに彼女には娘が一人いるという。申し訳ないと思いながらあれこれ詮索してしまった。 「でも、あなたは独身なんでしょう?子供を産んでから離婚したんですか?」 ご令嬢の境遇でも男女関係はけっこうおおらかである。同じホテルには富裕階級の子女が宿泊していたが、エレベーターの中で短い会話を交わしていると、急速な接近をしてくる。まだ高校生くらいの歳なのだが・・・・・ 「日本人なの!? 珍しいわね。部屋へ遊びに行ってもいいかしら?」 日本ではあり得ないほどのもてかた。しかし喜んではいられない。この国の人のエイズ感染率は日本と比べるとかなり高いらしい。さもありなん。 俺はエチオピアのマイケル・ジャクソン
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夕食時にそういう店へ三度ほど行く機会があったので、おしまいには私も肩振りダンスくらいは見よう見まねでやりだした。即興歌手が私を |
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踊りは数少ない娯楽の一つのようだ。アジアではあちこちで見かける映画館も少ない。最近まで厳しかった言論統制のせいもあるのだろう。インターネットでもWWWが見られるようになったのはそう昔のことではない。それ以前はメールの送受信のみしかできなかったらしい。でも、これだけでも十分楽しい。日本にも娯楽は数あれど、カラオケしかしないとか、ゴルフだけ、という人も多いモンね。ナイフだけなんて人も、ごくまれにいるし・・・。 |
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前回のエチオピアでも気づいていたが、この国には日本と良くにた風習が多い。今度は野点(ノダテ:屋外でやる茶会)に参加する機会を得た。(忙しいといいながら、こういう暇はちゃんとつくってある。不思議な旅だ)
写真の通り、民族衣装のおばちゃんが炭火で煎ったコーヒー豆をその場でコーヒーにし、デミタスに注いでくれるのを回りでのんびりと待つのだ。現地の参加者に それと、年長者に対する敬い方も良く似ている。これほど離れた国で、しかも人種も宗教もかけ離れた人たちが、こんな風に似通った文化を持つのには驚かされる。今更ながらに"○×民族の特殊性"なんて言葉は、ウソだ、底が浅い、と思わざるを得ない。本当に特殊な国など無いのだろう。もちろん、特殊ではない国も無いのだろうが。 |
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1997年12月
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